【判例】協和組合グローブ事件&阪急トラベルサポート事件
事業場外みなし労働時間制の判例2選
今回は、「事業場外みなし労働時間制」に関して争われた2つの判例を取り上げます。
■ 沼津交通事件
「事業場外みなし労働時間制」とは、
労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合に、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間働いたものとみなす制度です。
例えば、
「あなたの仕事は外回り営業なので労働時間を正確に把握できません。したがって、8時間働いたものとみなしますね。」
というように、実際の労働時間が3時間でも10時間でも、「8時間働いた」と扱われることになります。
この制度を適用するためには、前提として「労働時間を算定し難いとき」に該当する必要があります。
それでは、この点が争点となった2つの代表的な裁判例を見ていきましょう。
■ 共同組合グローブ事件
原告は、外国人技能実習に係る監理団体に雇用され、外国人技能実習生の送迎や日常生活の指導、トラブル発生時の通訳などに従事していました。
一審・二審は、使用者が「業務日報」によって労働時間を把握できたとして、「労働時間を算定し難いとき」には当たらないと判断。
その結果、みなし労働時間制の適用を否定し、使用者に残業代の支払いを命じました。
しかし、最高裁はこの判断を覆しました。
「業務日報の正確性を十分に検討することなく、日報の存在のみをもって労働時間を算定可能と判断したのは誤りである」とし、原審判決を破棄・差し戻しました。
つまり、最高裁は
「業務日報の正確性の担保が不十分であれば、労働時間を算定できるとはいえない」
と判断したのです。
■ 阪急トラベルサポート事件
次に、「阪急トラベルサポート事件」を見てみましょう。
原告は、派遣元に「登録型派遣添乗員」として雇用され、派遣先の旅行会社が企画する海外ツアーなどの添乗業務に従事していました。
一審は、この添乗業務について「労働時間を算定し難い」と認め、みなし労働時間制の適用を肯定しました。
しかし、二審はこれを覆し、「添乗業務は労働時間を算定可能」と判断。
最高裁も二審の判断を支持し、みなし制度の適用を否定しました。
その理由として、
-
ツアー日程があらかじめ明確に定められていたこと
-
添乗員が自ら業務内容を大きく決定する裁量がなかったこと
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業務中、携帯電話の常時携帯と電源オンが義務付けられていたこと
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添乗日報の提出が求められ、業務内容が詳細に報告されていたこと
などが挙げられました。
これらの事情から、「労働時間を算定し難い」とは客観的に認められないと判断されたのです。
【図解】

■ 2つの判例からわかること
どちらのケースでも、「日報」による報告が行われていた点は共通しています。
しかし、その正確性や管理体制の違いが、結論を分ける大きな要因となりました。
つまり、
「労働時間を算定し難いとき」という要件は、抽象的に決まるものではなく、
業務の実態や管理のあり方を個別具体的に検討する必要がある
ということです。
■ まとめ
もしあなたの勤務先が「事業場外みなし労働時間制」を採用している場合、
今回の判例を参考に、
「本当に労働時間を算定し難いといえるのか?」
を一度考えてみると、制度の理解がより深まるでしょう。

